日本の運動場はなぜ土なのか?(トレンド)

日本の運動場(校庭・グラウンド)はなぜ土なのか? 

防塵対策を必要とする日本の校庭・グラウンド

風で吹き舞い上がる校庭・グランド(運動場)の土埃や砂を、散水によって食い止める。散水機による防塵対策を長年行ってきましたが、そこで疑問が一つ浮かび上がりました。誰もが思い浮かべる校庭は決まって土のグラウンドだと思います。しかし世界的に見ると、土のグラウンド(運動場)は日本だけ・・・なぜ土なのでしょうか。その考察をコラムにまとめてみました。
英国ケンブリッジ大学の芝生

世界で活躍する日本人選手などでも、学生時代はトンボ(レーキ)で校庭を均したり、土の校庭によって精神面を鍛えた方も多いと思います。

しかし、近年の気候変動の影響で、日本国内では気温が上昇し、風が強くなり、校庭の防塵対策も考慮しなくてはならない状況になりました。

そもそもなぜ、日本の校庭は土なのか?

今回のコラムではその謎を日本の近代スポーツ史より紐解いていきたいと思います。

 

 

日本における近代スポーツの発祥

日本にはそもそも「スポーツを楽しむ」という概念はありませんでした。しかし体を使い技術を競う「行事」「神事」はあり、豊作など占う行事や、宮中で行われた射礼・蹴鞠 などがありました。また身を鍛えるものとして広がりを見せた「武芸」、流鏑馬や相撲などがあり流儀・流派を形成していきました。

娯楽ではないものの、それらを楽しむ感覚というものも人々の中にはあったと多く史書が伝えております。後の明治時代に日本に伝えられたスポーツが簡単に受け入れられたという点については、このことが大きく影響していると言えます。

 

F.W.ストレンジ先生

明治時代になると、西洋化を目指した政府が、英国から多くの外国人教師を招き、その教師たちが同時に西洋の生活様式を持ち込みました。スポーツもその中の一つで、日本の近代スポーツはこうした教師達のレクリエーションからスタートしたと言っても過言ではないでしょう。

スポーツが教科として認知されるようになったのは英国人教師のF.W.ストレンジが東京英語学校にて英語を教えつつ、生徒たちに英国式のスポーツを教えたことからです。ストレンジは名門イートン校仕込みの才能を発揮して、多くのスポーツを日本に伝えました。

 

日本の運動場(校庭・グランド)の発祥

明治7年(1874年)に「体育」が正式科目となり、日本初の体育の技術を教える「体操伝習所」が設立しました。明治19年(1886年)には東京師範の高等師範学校の昇格にともない体育伝習所は同校「体育専修科」に改編されました。

 

東京師範学校の校庭

ここで初めて学校の校庭、いわゆる運動場と呼ばれる空間が初めて登場しました。

東京師範学校のフットボール部がこの校庭を使い、正式にサッカーを行うようになりました。

明治41年(1908年)には、外国人で構成された横浜クリケットクラブとの対決に東京師範学校が2-1で勝利、サッカー文化が根付いた瞬間でもありました。

 

自由学園明日館

大正11年(1922年)開校の自由学園明日館。

日本最古の芝生の校庭については、一般的に東京・目黒にある自由学園の前庭であると言われています。

設計は、帝国ホテルをデザインしたフランク・ロイド・ライト。アメリカでは芝生の校庭が一般的ではあり、フランク・ロイド・ライトは、その風習をそのまま日本に伝えることができたと言えます。

 

明治神宮外苑競技場

大正10年(1924年)明治神宮外苑競技場

国立競技場の全身である明治神宮外苑競技場は日本で初めての本格的陸上競技場として建設されました。完成当時は東洋一と言われ、楕円形のトラックは一周400メートル、トラック内のフィールドはサッカーとラグビーおよびホッケーでの使用を想定し、長さ160m、幅67mで野芝が植えられていました。

 

写真の建設当初はまだ土のままですが、のちに野芝が生育しグランドカバーとなりました。東京オリンピック開催が決定した昭和36年(1961年)に姫高麗芝に改修されました。

 

 

 

芝生の運動場が普及しなかった要因

明治以降、西洋芝の輸入があり日本にも芝生文化が普及しつつありましたが、西洋芝は日本の気候に適合しにくい性質と、嗜好品としての側面があり運動場使われることはありませんでした。また日本古来の日本芝(高麗芝)は昔から存在はしていましたが、そもそも踏みつけに弱く採用することができず、最終的に校庭やグランドに最適な芝生が用意できず、芝生の校庭やグランドは普及しなかったと言えます。

 

甲子園球場外観

日本独自の進化を遂げた土のグランドの最高峰
阪神甲子園球場

1915年(大正4年)からスタートした全国中等学校優勝野球大会(甲子園大会の前身)が開催9回目となると、注目度が増し、新球場の計画が浮上しました。

計画当初は国内にあった野球場では参考になるものがなく、アメリカNYにあるポロ・グラウンズⅠをモデルに設計されたと言われています。急遽大型の球場を作った為、開設時点ではまだ外野も土のままでした。

 

野球スライディング

土のグランド維持と人格形成

武士道精神にはいくつかの考えがありますが、「日に新た」や「素直な心」などという考えがあり、場を清める、清掃することが、鍛錬に直結すると言われています。

日本の教育は身体活動を通して精神を磨く武士道精神が重んじられ、スポーツの「楽しみ」を「鍛錬」と結びつけました。その鍛錬の場に土のグランドは恰好のゆりかごだったと言えます。

 

土の運動場(校庭・グランド)は日本文化に融合し、低コストでの開設管理ができることから、今日まで日本全国に広まっています。
散水機に関するお問合せはこちらまで。
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受付時間:08:30~17:30 (毎週 土曜・日曜・祝日)

 

 

土の運動場が問題視される

学校教育の場で土の運動場に対する問題提起がなされたのは1970年代からで、気候変動や情操教育の観点から、土より芝生の方が子供が裸足でのびのびと遊べ、ストレスが軽減されるという研究結果が多く広まりました。また下記グラフのように年々気温が上昇しており、鍛錬よりも子供の健康管理に教育の視点が重きをおくようになったという一因もあります。

 

日本の平均気温の変化グラフ

グラフが示すように、日本の平均気温は年々上昇しており、2020年は、調査を開始した1890年以降、一番暑い一年となりました。

 

気象庁の日本の年平均気温より 引用元

細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。
基準値は1981〜2010年の30年平均値。

学校現場で、どのような問題が起きているのか?

散水機ドットコムには「砂埃を抑えたい」「人工芝のグランドにしたけど冷却したい」などのご相談が多く寄せられております。

「砂埃が酷く、近隣からクレームが来ている。なんとかしたい!」(千葉・大学教職)​
「年々、夏が暑くなってきており、授業の前に短時間でグランドを冷却したい。」(埼玉・小学校教諭)
「グランドを人工芝に張り替えたが、夏場の冷却が上手くいかない。」(愛知・中学校体育教諭)
「そもそも水撒きって先生の仕事なの?時間がない!」(埼玉・小学校教諭)

などが代表的な例です。

 

 

 

散水機.comにできること

散水機による防塵
スプリンクラーで定期的に散水すれば、防塵効果があり、近隣への被害を防ぐ事が出来ます。散水機ドットコムのスプリンクラーの中には短時間で大量の水を遠くまで撒けるハイスピードスプリンクラー(180°回転に65秒)というものがあり、大変好評です。既存のグランドに簡単設置できる移動式スプリンクラーのご用意もございます。

散水機による冷却
人工芝は樹脂であるため、散水は不必要であると思われがちですが、人工芝は下地が放熱しにくいコンクリートであったり、直射日光で表面が高温になりやすい欠点があります。そこで人工芝冷却の為に散水機での冷却がお奨めです。もともと自動散水用のスプリンクラーは平面に大量の水を撒くのは得意です。

散水機による水やり
緑化された校庭・園庭も例外ではなく、雨が降らない時期などを考慮して、計画的に散水をしないと、部分的に枯れてしまったりと、かえって費用がかかってしまったりしてしまいます。また学校には散水を専門に行うスタッフがおらず、先生の負担も物凄く大きいです。校庭・園庭を緑化する際にはぜひ散水機の採用を想定してください。

先生の負担を軽減
散水機を導入しても、結局、ホースをつなぎバルブをひねるという作業が発生してしまいます。多くの現場で、散水機だけでなく、コントローラーと電磁弁を導入して、散水の自動化を行っています。コントローラーにはタイマーが内蔵されており、決まった時間に水を出すことができます。またセンサーを接続することにより、雨や風に反応して散水停止することも可能です。

新築も既存も、最良のご提案をいたします。

①とりあえず金額が知りたい!お急ぎの方!

水源の位置を記載した大体の寸法が分かる図面を散水機ドットコムまでお送りください。

弊社積算スタッフにて、図面にスプリンクラーを落とし込んでいきます。

②しっかりとした計画を立てて欲しい方!

散水機ドットコムまでご連絡ください。日程調整を行って現場調査を実施いたします。

プロスタッフが現地で水源水圧調査、飛散してはいけないエリアの確認などを行います。

注意:お見積書、計画図の提出にお時間をいただく場合がございます。

散水機導入のお問合せはこちらから。
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受付時間:08:30~17:30 (毎週 土曜・日曜・祝日)

 

 

快適な環境作りのお手伝い~施工事例

ぜひ、散水機を導入して、心地よい運動場を作ってみませんか?

下記に施工事例をまとめましたので是非ご覧ください。

 

 

参考文献

(書籍):陣内靖彦著,東京・師範学校生活史研究,東京学芸大学出版会,2005-7-1.

(書籍):大櫃敬史著,時空を超えて―甦る、幻の体操伝習所体操場,亜璃西社,2015-3-6.

(書籍):高橋孝蔵著,倫敦から来た近代スポーツの伝道師
               ―お雇い外国人F.W.ストレンジの活躍,小学館,2012-6-1.

(論文):藤崎健一郎著,校庭芝生化における先駆的事業に学ぶ,日本芝草学会,2009-06

(論文):浅野義人著,校庭の芝生化―技術面における課題と展望,芝草研究/32巻 (2003-2004) 2号

(JaWP):参考文献, Wikipedia, 閲覧日 2021-11-22,
                https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%93%E8%82%B2
                https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%93%E6%93%8
                D%E4%BC%9D%E7%BF%92%E6%89%80

(Web):佐野 慎輔著,5.日本にスポーツはなかったのか,笹川スポーツ財団HP,2017.02.10, 
               閲覧日2021-11,https://www.ssf.or.jp/ssf_eyes/history/sports/05.html

(Web):国立競技場の歴史詳細,JAPAN SPORT COUNCIL(日本スポーツ振興センター)HP,作成日不詳,
               閲覧日2021-11,https://www.jpnsport.go.jp/kokuritu/tabid/421/Default.aspx

(写真):「英国ケンブリッジ大学」「自由学園明日館」「甲子園球場外観」「野球選手」
       photo-ac.com

(写真):「東京師範学校」「明治神宮外苑競技場」筆者竹澤所蔵

 

 

最終更新日: